写真と心の中に刻まれた、ある日の旅のワンシーン…
鉄道と列車、駅舎巡り、エアラインと言った乗り物系の他、旅で訪れた街の風景、気になるモノ、宿泊したホテルなんかも綴った旅行記ブログ。
日本全国、たまに海外へ。
木造駅舎など古く趣きある駅舎は、使い込まれた渋味漂う部分が、味わいある雰囲気を作り上げています。例えば、造り付けのベンチ、軒や柱、改札口とか…。それぞれに面白く注目に値するのですが、私が特に興味深く見ているのが、切符売場である「出札口」や、荷物窓口であった「手小荷物窓口」と言った窓口部分や、その痕跡です。
手小荷物輸送とは特に最近の若い人には聞きなれない言葉でしょうが、駅から駅へ小口の荷物を輸送する事です。ざっくりと言うなれば、鉄道を使った宅配便のようなものなのですが、荷物の目的地は各自宅ではなく駅で、駅まで荷物を取りに行かなければいけませんでした。個人が荷物を送りたいとか、旅行者が目的の駅まで手荷物の輸送を依頼するという風に使われていました。
(※詳しくはwikipedia;チッキへどうぞ)。
今でこそローカル線の小駅と言えば、無人駅がほとんどですが、何十年も昔、鉄道が輸送の主役だった頃、日本の津々浦々に鉄道路線が張り巡らされ、駅舎がある有人駅が多く、駅員さんが勤務していました。なので駅から駅に荷物を送るという輸送手段は、そのような時代ならではだったのでしょう。しかし宅配便の普及などで衰退し、国鉄においては旧来の手小荷物輸送は1986(昭和61)年に廃止されました。
木造駅舎など、昔からの古い駅舎が残る駅では、窓口やその跡がいまだに残っている駅も多くあります。もし駅で出札口の隣に、一段低い窓口があれば、それが手小荷物窓口の跡です。
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木造駅舎好きの私としては、やはりカウンターや窓枠などが、使い込まれた木のまま昔の造形を留めていているのを見ると深く萌えます(笑)。例えば、先日巡った中央本線のJR東海区間の中央西線の駅では・・・
洗馬駅の手小荷物窓口跡。長年使い込まれた木のカウンターが味わい深く、撫でて木の感触を楽しんだり、傷を指で辿ってみたり…。カウンターを支えとなる木材…、持ち送りと言うのですが、カーブが入った凝った造り。残念ながら窓口は塞がれていますが、これだけでもよく残っていたものです。
同じく洗馬駅。手小荷物窓口跡の左隣には、出札口のカウンターが取り払われた形跡が残っています。塞がれた窓部分はポスターなど掲示物を張り出すちょうどいい場所になっています。
二駅、名古屋方面に進み贄川駅へ。洗馬駅と似たような木のカウンターが残っていますが、こちらは出札口にもカウンターが残っています。手小荷物窓口跡の周囲の木枠の装飾が目を引きます。
贄川駅の出札口跡の木製カウンター。金銭や切符を遣り取りする穴があったと思われる辺りなのですが、ダイヤ状のギザギザ模様がかすかに彫られています。切符やお金を取り易くするために彫られたのでしょう。
この金銭台部分も駅により色々で、見ていくと面白いです。前の記事の「ただいま初駅旅中!」で、「贄川駅で列車に乗り遅れた」と書いていますが、この部分の撮影と観察に夢中になっていたためであります(笑)
更に4駅南下し宮ノ越駅へ。手小荷物窓口の方はサッシ窓になっていますが、こちはら上の二駅よりも、昔の駅窓口らしい渋い造形を留めています。だけど、出札口のガラス窓周りは改修の手が入ってると思われまが、とてもいい雰囲気です。
出札口カウンターの持ち送りは、たかが支えの木ですが彫り込まれ凝った造りです。
出札口の金銭受け台は、人工大理石と思われる素材が使われていました。
この中央西線の駅巡りは、古い木造駅舎の窓口跡を堪能したテンション上がりまくりの旅でした。
不要となった窓口は、残念ながら多くの駅で何らかの改修がされていて、そこそこ痕跡を残したものや、徹底的に改修され、のっぺらぼうのようにフラットになってしまったものまであります。そんな中で、ほぼ完璧なまでに昔のままの造りを残し、感嘆せずにはいられない窓口を残した駅をいくつかご紹介します。
JR西日本・因美線の知和駅。
同じく因美線の美作滝尾駅。
旧国鉄長井線、現山形鉄道フラワー長井線の羽前成田駅。
木造駅舎は現代でも意外と多く残れど、これほどまでに使い込まれた木の造りのままを残した駅窓口は、もう滅多に無くため息もの。記事を書きつつ素晴らしさにただ感嘆しています。
そんなフェチズムの原点!!を記事にしました。どうぞご笑覧下さい。
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