写真と心の中に刻まれた、ある日の旅のワンシーン…
鉄道と列車、駅舎巡り、エアラインと言った乗り物系の他、旅で訪れた街の風景、気になるモノ、宿泊したホテルなんかも綴った旅行記ブログ。日本全国、たまに海外へ…
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寝台特急日本海の惜別乗車の旅で青森に行った時、津軽鉄道のストーブ列車に乗りました。ストーブ列車は基本的に冬季運行のイベント列車的存在ですが、今や津軽鉄道という枠に留まらない、青森県の冬の風物詩とも言える存在で、観光客の人気が高い列車です。
ストーブ列車は定期列車のレールバスと併結して運行されています。津軽鉄道はローカル線でありながらも、約1時間に1本の列車があり、その内、ストーブ列車は1日に2~3往復の運転で、駅巡りの旅で気軽に乗車できる列車でもあります。なので乗車したのは、津軽鉄道両端の五所川原駅でも津軽中里駅でもなく、途中駅の津軽飯詰駅からでした。
当日は冬の寒さはもちろん風がやたらと強く、到着数分前にホームに出たのですが、それでも僅かの待ち時間に寒さが身にしみます。そしてやっとストーブ列車の姿が見えてきました。DD35ディーゼル機関車、旧型客車オハフ33という50年以上活躍する編成が、私の前を通り抜けました。そして!干し魚を焼いている匂いがほのかに漂います。ストーブ上の網で魚を焼いてお酒を楽しむという光景はストーブ列車の定番と言う事を思い出しました。乗車前の一瞬に期待が更に高まりました。
車内に入ると、木張りの床の古い客車はもちろんですが、そんな空間にレトロなダルマストーブがデンと鎮座する姿がやはり印象的。ストーブの横には石炭を満載したバケツが…。鉄道の旅では、車窓風景がより眺めやすい窓側が好まれるのですが、ストーブ列車ではやはりストーブ近くが特等席。ストーブ間近の通路側という特等席に座りました。
津軽の冬の風物詩として鉄道ファンならずとも有名で、よく人が乗っているように見えました。新聞広告を見ていると、この時季、ストーブ列車を組み込んだ青森のツアーも多いようです。
長年、厳しい冬に乗客を暖めてきてダルマストーブは、すっかり黒ずんだいでたちが味わい深く、石炭が赤々と燃える様子が覗き穴から垣間見えます。ストーブ周りの人には、もう干物を焼き上げ食べている人も。いいなあ…。
車掌さんが火の様子を見に来ました。バケツから石炭をすくいストーブの中に放り込んだり、中をガッサガッサとかき混ぜたり…。小さなストーブの中で荒れ狂うように揺れる炎が頼もしいです。暖かさを保つため火を絶やさないように、そして火を焚いているので少し間違えれば大惨事なので、かなり気を使うのでしょう…。
津軽飯詰駅から約15分で津軽鉄道の主要駅の一つである金木駅に到着。バスツアーの団体はこの駅で下車し、駅横に停められていたバスの中にゾロゾロと吸い込まれていきます。金木には太宰治の生家、斜陽館もあるので、一般の乗客も多く下車したようで、車内は一気に閑散としました。
5分停車して金木駅を出発しました。窓側の席に移動し、後は静かになった車内で車窓の雪景色と、昔ながらの木の造形を残した旧型客車の旅をゆったりと楽しみました。いつまでも…、このまま国鉄の長距離鈍行列車のごとく、もっと遠くまで乗っていたい気分…
何十年前の雪国のローカル線を旅している心地に浸っていましたが、大沢内駅で下車。扉は自動ではなく、一瞬戸惑いながらも開けてホームに足を下ろすと、積もった雪に足がズボリと。普段は単行~短編成のレールバスしか入線しないので、ホームの端の方までは除雪はしていないようでした。
大沢内駅から折り返す時もストーブ列車併結の列車だったのですが、短時間の乗車だったので、追加料金不用のレールバスの方に乗車しました。雪積もる寒空の下から車内に入ると…
桜が咲き乱れ、一瞬で春になったような華やかな雰囲気に驚かされました。私も寒さが吹っ飛び晴れ晴れしい気分になりました。この列車は「合格列車」といい、受験生の合格を祈ってこの時期に運転される特別列車だそうです。
合格切符の行き先は、青森県内有数の桜の名所・芦野公園の最寄駅、芦野公園駅。受験生の皆様にサクラ咲きますように!
ストーブ列車に乗ったのは僅か30分でしたが、列車はもちろんアテンダントさんや車窓さんなど乗務員の方々からもてなしの気持ちが感じられ、とても楽しめました。ストーブ列車に乗るためには、運賃の他にストーブ列車料金として300円が必要なのですが、昔ながらの旧型客車の旅が楽しめて+300円だけとは嬉しいものです。古い車両の維持も並々ならぬものがあるはずで、もうちょっと取ってくれても全然構わないような…。
次回は是非とも全区間乗り通したいです。そして今回できなかった、ストーブの上で干物を焼いて列車に揺られながらのんびり一杯といきたいものです。
[2012年2月訪問]
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