写真と心の中に刻まれた、ある日の旅のワンシーン…
鉄道と列車、駅舎巡り、エアラインと言った乗り物系の他、旅で訪れた街の風景、気になるモノ、宿泊したホテルなんかも綴った旅行記ブログ。
日本全国、たまに海外へ。
~駅・桜旅2012 肥薩線(2日目)~
朝7時、人吉発吉松2行きの始発ですが、同区間1日5本の内の貴重な1本でありながら、乗客は私1人だけ…。
SL人吉号、いさぶろう・しんぺい号での矢岳越え、観光特急はやとの風など、肥薩線は観光路線としても注目されていますが、そうして活性化しなければ路線の維持が危惧される区間…。そんな現実を見せ付けられた心境です。
結局、私以外、誰の上下車も見る事も無く矢岳駅で下車しました。矢岳駅は古い木造駅舎はもちろんですが、駅前から見る集落と田畑の風景が何よりも印象的です。緑豊かな山に囲まれた小さな集落に、駅前から一本の道がまっすぐ伸びている風景がなんとものどかで、心洗われる心地さえします。日本の田舎の駅前原風景ってこんな風なんだろうなと思わせるものがあります。
私は「好きな駅からの風景は?」と聞かれたら、まっさにに矢岳駅のこの風景をあげます。ただ4月のこの時期は若干冬枯れな感じですが…。
昨日、八代‐大畑間であれほど咲き誇っていた桜ですが、標高536.9mという肥薩線最高所の駅の矢岳駅では春の便りはまだ先のよう…。どの桜もまだ硬いつぼみのままでした。
ひっそりとした矢岳駅で古い木造駅舎を堪能していましたが、吉松行きの観光列車いさぶろう号が到着すると、駅が一気に華やぎました。みんな短い停車時間で、昔懐かしい駅舎を撮影したり、人吉市SL展示館を見に行ったり…。私もこの列車に乗り、惜しみつつ矢岳駅を後にしました。
矢岳越えの絶景を楽しみ、真の幸せの駅、真幸駅に到着しました。肥薩線唯一の宮崎県の駅です。いさぶろう・しんぺい号は途中3駅で駅見学のため数分の停車時間が設定され、真幸駅では4分の停車時間との事。幸せの鐘に群がる人々を横目に私が急いだのは…
枯池(笑)じっくり見てる余裕は無かったのですが、相変わらずでした。
そして高台の駅舎に続く坂道には満開の桜が。いつかの6月に訪問した時は、坂沿いの紫陽花がとても奇麗だったのを鮮明に覚えているのですが、桜も奇麗でした。この桜を撮影した所で、ホームからは出発の案内があり、走っていさぶろうの車内に戻りました。
県境を越え鹿児島県に入り、終点の吉松駅で観光特急はやとの風に乗り、大隅横川駅で下車しました。
嘉例川駅駅舎と同い年、1903年(明治36年)築の木造駅舎には、戦時中の米軍機による機銃掃射跡が生々しく残っています。傷跡を見るにつけ、苦難を乗り越え百年以上、こうしてあり続けられる事は凄いなとじみじみと感じます。
この駅に来るのは2回目ですが、駅舎が登録有形文化財になったおかげか、駅周辺は公園みたいに整備されていました。そんな中、駅舎の脇に小さな桜の木があり、よく見ると「成人式記念樹」とプレートが掲げられています。この他にも、ここ数年の成人式記念植樹の桜が何本があり、待合室には大隅横川駅の駅舎をバックに撮影した成人式の記念写真が飾ってありました。横川町は周辺市町村と合併して霧島市になりましたが、旧横川町の新成人の方々がなさっておられるようです。旧横川町の他でもない、ここで桜の木を植え記念撮影に来るなんて、町民の方々の百年の駅舎に対する愛着と誇りが感じられて、嬉しくなってきます。
ちょうど昼時で、駅近くの商店でパンを買ってきました。多少風は吹くものの、外に居たいと思えるポカポカ陽気。駅横に整備された公園のベンチに腰掛けランチタイム。このベンチが駅舎を眺めるベストポジションにあり、駅舎を堪能しながら何とも贅沢なひと時を過ごした気分です。ベンチに座りながら何気に頭上を見上げると、植えられて数年内の、か細く小さな桜の木が精一杯可憐な花を咲かせていました。記念植樹もあり、大隅横川駅は十何年後かは桜の名駅になっているに違いありません。
2番線…、かつての3番線のレールに沿って桜が何本も植えられた華やかな雰囲気の中、隼人方面行きの列車がやってきました。
そして嘉例川駅へ。過去に3回訪問していますが、肥薩線に乗る時は、やはりこの駅に寄りたくなります。過去3回の訪問と違って目新しかったのが、旧駅務室が開放されていて、初めて中に入れた事です。
旧駅務室内部から見た出札口跡、手小荷物窓口跡。使い込まれた雰囲気があり、棚の扉には遺失品保管箱と書かれた破れかけのシールが貼られたままで、有人駅時代の息吹が伝わってくるかのよう。その他、室内には嘉例川駅の写真や昔の駅名標などが展示されていました。
だけど、昨日から訪れた肥薩線他の駅と違って、嘉例川駅は人が絶える事が無く、その中にはこの駅を訪問する事を目的とした非鉄の観光客も少なからず居て、すっかり有名になったんだなと感心しました。はやとの風3号の入線の頃には、平日にも関わらず20人以上の人がホームで出迎えていました。ウェブ上で鉄道ファンの声を聞いていると、こうした「俗化」に抵抗を感じる声も散見されます。それもそうかもなぁと思いながら、それでも駅舎や周辺にやたらと手を加えるなど、必要以上の俗化はされていないと思います。何より、古く趣きのある木造駅舎の魅力を広く伝える存在があってもいいのでは…と私は思っています。
嘉例川駅では駅前や廃プラットホームに桜の木が植えられていました。そして…
切符売場のカウンターの隅には、誰かが生けた桜の木が…。昔ながら姿を留めた駅舎がささやな春で彩られ、まるで何十年も昔の春を味わっている気分に陥りました。
(⇒前編の肥薩線・大畑駅以北の1日目は以下へどうぞ!
『肥薩線駅巡り、球磨川へ…そして大畑駅へ桜を追う旅』)
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