写真と心の中に刻まれた、ある日の旅のワンシーン…
鉄道と列車、駅舎巡り、エアラインと言った乗り物系の他、旅で訪れた街の風景、気になるモノ、宿泊したホテルなんかも綴った旅行記ブログ。日本全国、たまに海外へ…
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今回、5月中旬の北海道の旅は、石北本線の白滝シリーズ訪問の他、駅に咲く桜を目的にしていたのですが…、女満別空港に着陸する時、空から目にしたのは、一面真っ白の雪の大地!正直、ヤバい所に来てしまったと戸惑いました。
本州はゴールデンウィークが終り、季節は初夏へと移ろうかという頃。しかし、北海道では4月に入っても冷え込みが続き、道東ではGW中にも雪が降り続いたというニュースが報じられました。そのため桜の開花は例年より大きくずれ込んでしまったようです。
女満別空港から北見駅行きのバスに乗りました。最初、途中のバス停近くにある石北本線の愛し野駅にでも訪問し、そこから列車に乗ろうかと考えていたのですが、バスの出発時間が遅れたため、そのゆとりは無くなり、そのまま北見駅まで乗りました。
JR北海道・北見駅に到着。原野や畑は雪が積もっていましたが、街中ではさすがに雪はかなり少なかったです。でも本州の冬と同様の寒さに震え上がりました。
この駅には、9年前にちほく高原鉄道に乗りに来て以来です。JRの駅舎に隣接した2階建ての建物が、かつてちほく高原鉄道の本社でした。さらに昔、まだJRの池北線だった20数年前、私が初めて北海道に来た時、そこはビアホールだったと記憶しています。その時はビアホール開業間もない頃で、ランチを食べた思い出があります。今は北見市の観光協会が使っているようです。こうして移り変わりに思いを馳せると、時の流れを感じずにはいられません…。
駅舎はコンクリートですが、島式ホームの2番3番線には古い木製上屋が残っています。古く長い上屋は、昔からのこの駅の位置づけを象徴するかのような風格を感じさせます。今でこそ普通列車は単行か数両、特急オホーツクは5両前後ですが、昔は蒸気機関車に引かれた長い編成の列車が停車していた事でしょう。上屋には駅構内を跨ぐ自由通路が横切っています。しかし、歴史感じるこの上屋にほとんど手を付けなかったのは大正解。後世に残したい鉄道遺産です。
北見駅からは特急オホーツク4号の自由席に乗車しました。
この日のいちばんの目的は、白滝シリーズと呼ばれる石北本線の駅群の現役木造駅舎を訪問する事です。
石北本線には、西の上川駅の方から見て奥白滝、上白滝、白滝、旧白滝、下白滝と、「白滝」と名が付く駅が5駅連続している事で、鉄道ファンにまとめて白滝シリーズと呼ばれるようになりました。奥白滝駅こそ現在は旅客扱い廃止、信号所に格下げとなりましたが、それでも4駅連続で白滝と続き、白滝シリーズの面目は保っている感はあります。
その中で現役の古い木造駅舎が残っているのが下白滝駅、上白滝駅の上下白滝コンビ。しかし、白滝シリーズの区間は、過疎化が進み、白滝駅以外は人家や人気(ひとけ)がとても少ないとの事で、そのためまともに列車が停車するのは白滝駅だけという状況。それ以外の駅は、普通列車さえも多くが通過してしまいます。いわゆる秘境駅ばかりで、特に上白滝駅は朝の下り1本、夕方の上りが1本という、日本全国の中でもトップクラスの到達難関駅です。
まずは下白滝駅の隣の丸瀬布駅で下車しました。丸瀬布生涯学習館という図書館などがある公営施設との合築駅舎で立派に見えます。しかし無人駅で、駅としては右隅の出入口に待合所がおまけ程度にあるだけ。建物正面には丸瀬布駅という目立つ表記は無く、建物横の「丸瀬布駅」という道路標識程度の小さな看板があるだけ。建物右隅から回り込むとプラットホームがあります。
これが駅舎かと言われると、何か違うような気がします。でも暖房が効いていて、きれいな待合所とトイレがあるのは、旅行者としはとても有難く思います。
さて、ここから下白滝駅を目指す訳ですが、下白滝駅に停車する列車が下りは朝の1本、上りは午後~夜の3本という「鉄道の難所」。駅間徒歩で目指そうかと思ったのですが、10kmは歩くにしてはやや長く、他の予定との兼ね合いもあり、止む無くタクシーを使う事にしました。十何年前、SL雨宮21号に乗りに来た時、駅で客待ちしていたタクシーで行ったので、今回もアテにしていました。
しかしタクシーは待機していなく、歩いて駅前のタクシー会社の事務所に出向きました。しかし、そのタクシー会社は普段から一台での営業で、町営バスの運転も委託されていて、ちょうどドライバーさんは今そのために出ているとの事。戻って来るのは1時間後との事なので、待つしかありません…。駅前をブラブラしたり、駅舎の中の待合所で時間を潰しました。
1時間後に、ようやくタクシーが来てくれました。10kmだと街中なら2、30分程掛かりそうなのですが、山林に伸びる空いている国道で、特に飛ばすでもなく、約10分程度で下白滝駅に着きました。
国道から150メートル程奥に、下白滝駅の木造駅舎がポツンと佇んでいます。周囲には下白滝駅近く唯一の定住者と思われる酪農を営んでいる家があります。サイロや牛舎などが目に付きますが、敷地内に犬小屋のような子牛用の牛舎が100以上は並んでいようかという風景が壮観です。
駅舎は車寄せが撤去され、外壁はあちこち継ぎはぎに補修された跡があります。満身創痍になりながら、そして恐らくはほとんどいないであろう乗降客を待っている姿がいたいけです。
国道と駅を結ぶ道の上には、牛舎の番犬が5匹たむろしていました。かつて同じ石北本線の金華駅前で、限りなく野良犬に近い放し飼いの番犬に追いかけられた悪夢が甦ります。しかも犬達はこちらを気にしているようで、その内の一匹が私の方にやってきました。躾けられていそうな感じで、飼い主の方が近くで作業しているので、こちらが何もしない限りは襲われなさそう…。しかし、油断は禁物で、駅舎の中にそっと逃げ込み、扉をぴしゃりと閉めました。すると駅舎の外を少しうろうろして、仲間のもとに帰ってくれました。とりあえず無害と判断してくれたようで、ホッと一安心。
下白滝駅の外観は補修の跡が目立ちますが、待合室はよく昔の趣を留めています。出札口跡、手小荷物窓口跡は塞がれながらも、木のカウンターは昔のままの造りを留めているのが見事!
そして意外な物をこの駅で発見しました。何と私が枯池と呼んでいる駅の池庭の跡です!捨てられた枯れた枝ですっかり埋もれていていましたが、窪んでいて石で縁取られていたので、ちょっと見ただけでわかりました。
そして下白滝駅上りの始発列車、14時01分発の列車に乗りました。午後という何と遅い始発列車!! 多分、このダイヤは、遠軽方面へ朝に出かけて、午後や夜に戻って来るというパターンを想定してなのでしょうが、下車した人はいなく、乗車したのはもちろん私1人でした。
車内から今回はパスする旧白滝駅を眺めつつ、列車は白滝駅に到着しました。
列車はこの駅で終点です。特急オホーツクの一部が通過する以外は全列車が停車し、平成元年築の時計塔を備えた小奇麗な洋風駅舎は、白滝シリーズ・フラッグシップ駅の貫禄。しかし、駅舎改築後、僅か3年で無人駅となってしまいます。
白滝駅から3km先の上白滝駅へは駅間徒歩で目指します。十分程で市街地は終わってしまい、あとは家屋がぽつりぽつりと点在する原野をひたすら歩きました。その家屋も住人が去った廃虚が多かったです…。交通量がそこそこある国道とは言え、路側帯は広く歩道もしっかり設けられていたので、安全に歩けました。
右手に神社が見え、名前を良く見ると上白滝神社。上白滝駅が近い事を感じました。 しかしこの神社、実は鳥居のすぐ後ろの参道の手前に、石北本線のレールが横切っています。線路に入らないでというJR北海道の看板がありますが、これは渡らないと参拝できませんね…。
写真をあれこれ撮りながら歩き、約1時間で上白滝駅に無事に到着しました。
下白滝駅に比べ、使い込まれた木の質感が豊かで趣き溢れる木造駅舎でした。ここまで歩いてきて良かったと思わせてくれる素晴らしさです。待合室内こそは下白滝駅の方が、より原型を留め味わい深かったです。だけど、それぞれいい所があるものです。
上白滝駅は1日1往復の列車しか来ない秘境駅として知られています。しかし意外だったのが、駅周囲の家屋は10軒ばかりとこじんまりとした集落ながらも、それなりに人の気配がした事です。駅前の何かの工場では、作業の音が聞こえ、ある家屋の煙突からは煙がモクモクと立ち昇っていました。そして駅前商店が現役。秘境駅とみなされる駅で、このような商店が現役なのは、今や奇跡です。
そして夕方、上白滝駅に唯一停車する上りの普通列車がやってきました。この列車は始発でもあり最終でもあります。もうずっと以前から1日1往復なのですが、十何年か前、この列車に乗った時は上白滝駅で下車した地元の人を見ました。しかし、今回は私以外の乗降客は居ませんでした。今やとこの駅や、白滝駅以外の白滝シリーズの駅で下車する人のほとんどが駅鉄、乗り鉄と言った鉄道ファンなのでしょう。
(※この時の詳細な上白滝駅訪問記はこちらへどうぞ!)
旭川行きの普通列車の車内から、廃止された奥白滝駅跡を見ようと車窓に目を凝らしました。列車は峠を越えようと上り坂をぐいぐい上っている所です。
すると突然、山林の中に忽然と木造駅舎が現れ、一瞬で後方に過ぎ去っていきました。
奥白滝駅の跡でした。ホームは削られ土面となっていましたが、駅舎は健在。現在では保線員さんの詰所として使われているそうです。
片側の車窓しか見ていなかったですが、直前や直後に人家は見えなく、鬱蒼とした木々が続くばかり。旧駅周辺はもはや無人地帯と化していたようでした。
[2013年5月訪問]
2016年3月のダイヤ改正で、上白滝駅、旧白滝駅、下白滝駅が廃止される事が決まりました。3駅の廃止は、白滝シリーズの終焉を意味し、残るのは白滝駅だけ…。廃駅となる3駅は、木造駅舎に秘境駅と、それぞれに味わい深い駅だけに、とても残念。
そこで最後に冬の風情を楽しみたく、惜別の白滝シリーズ全駅訪問の旅に出ました。その記録を、このブログに連載しています。旅の始まりは
『上川始発のこの区間唯一の下り普通列車4621D』
真冬の駅間徒歩2回を含む秘境駅制覇の旅。全7編の壮大な!?旅となりました。ぜひご覧下さい。
コメント
2014-02-25 22:21 いい URL 編集
そう言えば白滝駅前に「黒曜水」なる水飲み場があって不思議に思っていたのですが、東アジアNo1の黒曜石原産地だったとは知りませんでした。埋文センターは白滝駅から意外と近いようなので、今度行った時は是非行ってみたいと思います。
2014-02-25 22:23 solano(管理人) URL 編集