写真と心の中に刻まれた、ある日の旅のワンシーン…
鉄道と列車、駅舎巡り、エアラインと言った乗り物系の他、旅で訪れた街の風景、気になるモノ、宿泊したホテルなんかも綴った旅行記ブログ。日本全国、たまに海外へ…
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JR東日本・奥羽本線の神町駅駅舎が取り壊される事になりました。
神町駅の駅舎は、戦後の1947年(昭和22年)に建てられ、GHQの鉄道運輸司令部事務所(RTO)が置かれた歴史があります。付近にはGHQの基地もあり、引込み線が引かれていました。
GHQが整備した駅舎は、木造とは言えアメリカ的な雰囲気が漂う大柄な駅舎で、占領下の面影を色濃く残す駅舎として知られていました。
しかし老朽化には勝てず、JR東日本は駅舎の建替えを決め、2017年(平成29年)の9月28日を最後に閉鎖、取り壊し工事に入る事になりました。
神町駅にはこれまで2回訪れた事があります。大好きだった古駅舎の姿を、使われなくなった後でも、責めて形ある内にもう一度見ておきたい…。そう思い日帰りで訪問する事にしました。
県営名古屋空港からフジドリームエアラインズのフライトで、山形空港に降り立ちました。神町駅と山形空港ターミナルビルは直線距離で1kmちょっと。実は神町駅は山形空港にいちばん近い駅です。しかし両者は滑走路を隔て立地し、またバス路線もないため、空港アクセス駅としては非現実的。大回りで距離は4kmと、歩くにはやや長めなので、タクシーで神町駅に向かう事にしました。
滑走路の南側を迂回すると、10分足らずで神町駅前の街並みに入りました。そして、見覚えのある駅舎が目に入りました。「JIMMACHI STATION」と駅名を掲げた2階建ての高さがある木造駅舎は相変わらず威容溢れる佇まい。久しぶりにこの駅舎を見られ胸が高まりました。
しかしタクシーが駅前に入った瞬間、まるで囚われているかのように工事用のフェンスで囲まれている姿を目の当たりにし、解体という現実を直視させられました。ああ、この駅舎はもう失われてしまうだなと…。
駅舎ホーム側に回ってみました。低い柵で囲まれている状態で、数メートル離れた所からまだ駅舎を見る事が可能でした。
プラットホームや待合室では作業員さんが仕事中。まだ解体工事に入り数日で、駅舎はまだ大きく手を加えられた様子はありません。
手小荷物窓口が塞がれながらも残っていましたが、解体中。駅事務室内部もがらんどう状態です。
かつて進駐軍が駐留した部屋の重々しい扉も、満身創痍。改築が検討に入った段階で、改修の手は施される事はなかったからなのでしょう…
鉄道運輸司令部事務所(RTO)が置かれていた部屋は駅事務室より広く、そして2階分の天井の高さがある部屋は広々とし、占領軍の威光をいまだに感じさせます。かつて幸運にも扉が開いていて、少しだけその部屋の中を見た事があります。できればもう一度、じっくりと見たかったのですが、それももう叶いません。柵の外から、その高さを少しでも感じようと、下から見上げるように覗き込みました。
RTOの出入口横には、小さな電灯がありました。白い壁に一点、塗られていない素の木の部分が残り、電灯の位置を教えてくれます。
取り付けられていたのはこんな電灯でした(2010年)。シンプルなれどレトロで味わいのある形でした。
仮駅舎は旧駅舎の右隣に設置されました。駅舎と言っても工事現場にあるような仮設のプレハブ小屋で、定員は10人程度。それにしても旧駅舎の何十分の一の大きさなんだろうと、激しい落差を感じずにはいられません。
壁に旧駅舎時代の駅名看板が取り付けられています。「JIMMACHI STATION」とローマ字で目立つように併記されているのが、いかにも神町駅らしかを感じます。新駅舎は小振りな簡易駅舎がらも、旧駅舎のイメージを取り入れたものになるとの事。旧駅舎の面影を伝えるものとして、この駅名看板も新駅舎に受け継がれればと思います。
ホームと外部間の動線は、これまでより右にずれ、駅隅の打ち棄てられた庭園の近くを通る事になります。これまでほとんど気付く人がいなかっただろうこの荒れ果てた庭園に気付く人も増えるかもしれません…
旧駅舎右隅には、細い桜の木が寄り添います。旧駅舎が健在な内に、咲いている風景を見たかった!!
これまで2回、神町駅を訪れていますが、思えば駅の外に出た事が無く、少し離れて旧駅舎を眺めてみました。無人駅となって久しい小駅の、何と堂々とした佇まいだろう!まるで何十年前の主要駅のような風情。
名残惜しいですが、そろそろ神町駅を離れる時が迫っています。
ふと待合室の中を見ると、足場が出来上がっていました。足場はまるで櫓か塔でも立てたのかという位高さ。最後の時まで、神町駅らしい風景を味あわせてくれるものです!
コメント
2018-04-22 10:02 唐橋 厚 URL 編集