浜寺公園駅~明治の木造駅舎、現役最終日の夜~

 2016年(平成28年)1月27日、南海電鉄・浜寺公園駅の洋風木造駅舎が遂に現役引退の時を迎えます。この駅舎は1907年(明治40年)、東京駅を設計した事で有名な辰野金吾が片岡安と大阪で設立した「辰野片岡事建築事務所」が手掛けた事で知られています。

 駅舎は高架の新駅舎の前に移築され、エントランスのように活用される予定なので、これからも限りなく現役に近い雰囲気ではあり続けると想像できます。

南海電鉄、明治の洋風木造駅舎・浜寺公園駅

 私は2003年に初めて訪れて以来、明治の瀟洒さを今に伝える洋館駅舎に魅了され、数年に1度は訪問していました。今年に入っても年始にお別れ訪問したばかりですが、やはり大好きな駅舎の現役最後の姿を目に焼き付けたいという思いは募るばかりでした。

2016年1月27日23時、現役引退の時が迫る駅舎

 1月27日、仕事が終わると急いで新幹線に乗り、浜寺公園駅を目指しました。新幹線、地下鉄御堂筋線、南海本線と乗り継ぎ、現地に到着したのは23時を過ぎていました。

南海電鉄本線、夜の浜寺公園駅プラットホーム

 駅は夜の闇の中、見慣れたプラットホームと洒落た待合室、そして駅舎といつも通りでした。夜に来た事はありますが、日付を跨ぐ直前のような夜遅い時間に来たのは初めてです。この時間は普通列車しか停まらなく駅は閑散とし、パラパラと地元の人が降りる程度でした。そんな中に混じり、私のようなカメラを手にした人が数名いました。

南海本線、浜寺公園駅、駅舎移転前の物の搬出作業

 そして、駅舎の方を見ると、ヘルメットを被った作業員の姿が何人も見えました。仮駅舎への移転準備をは既に始まっているようです。

 駅事務室の扉が開かれ、中には何人もの作業員がいます。この中を見るのは初めてで、少し離れた場所から興味津々に覗くと、物品の移動はかなり済んでいるようで、中はもぬけの殻に近い状態に見えました。自動改札口でも、5~6人の作業員が集まって何かをしていました。

南海・浜寺公園駅、明治の駅舎引退の日、夜空で輝く月

 駅の外に出て正面に立つと、空高くでは最後の夜に花を添えるように、月が輝いていていました。最後の最後まで美しい光景を見せてくれる駅よと感嘆し、ただ空を見上げました。

 周りを見ると深夜にも関わらず、浜寺公園駅駅舎の引退を見守ろうという人々がいました。ざっと見て20人程度でしょうか。

引退する浜寺公園駅舎、南海電鉄が設置したお礼の看板

 駅舎右側の手前には、浜寺公園駅舎長年の利用を感謝した看板がありました。

南海電鉄本線・浜寺公園駅、なんば行き最終列車が到着。

 24時17分、なんば行き最終列車が出発。

南海浜寺公園駅、明治の駅舎引退の夜、集まる人々

 引退の時が迫る中、みんな思い思いに駅を撮影しています。

南海浜寺公園駅、明治の駅舎の引退の時が刻一刻と迫る…

 先程よりなんか人が増えてきているなと思っていましたが、いつの間にか倍以上になっていました。50人以上はいたでしょうか…。私みたいに一眼カメラを抱えた鉄道ファンっぽい人というより、手ぶらの人が多く、家族だったり、犬連れだったり。友達と連れ立って来ていたり…。またある人は、「あなたなんでこんな時間にこんな所にいるの~!」と、下車してきた友達に驚かれていたり…。たぶん連日の浜寺公園駅舎引退の報道に接し、偉大で…そして身近だったこの駅舎の現役最後の瞬間を見届けようと、地元の人々が自宅から繰り出してきたのでしょう。同じラストでも、近年、鉄道ファンで騒々しい列車のラストランと違い、地元の人々にほのぼの見守られながらその瞬間を迎える様は、あたりまえのようにあったこの駅舎が、いかに惜しまれているかをしみじみと感じさせられました。

南海浜寺公園駅、明治の駅舎が迎える最終列車を見守る人々

 そして24時27分、下りの最終列車・羽倉崎行きが入線。何人もの人が改札前に集まり、その瞬間を目撃しようとしていました。

 終電が出発。セレモニーっぽいものもなかったようで、ちょっと賑やかさを除くと、いつも通りの光景なのでしょう。しかし、古き駅舎が現役として向かえる最後の列車だと思うと、ああ、終わっちゃったんだなと感慨と寂しさが混じった気持ちを感じずにはいられませんでした。

南海浜寺公園駅、終電後の仮駅舎への移転作業

 終電を送り出したら直に、作業員の方々が集結し、仮駅舎への移転作業が次の段階へ。自動改札機は取り外され、仮駅舎へと運ばれていきました。改札口の上でも、何かをドリルで取り外そうとしてるのか、火花を散らせながら、けたたましい音が鳴り響いていました。

浜寺公園駅、明治の駅舎最後の夜、終電後すぐに封鎖

 そして「旧」駅舎となった明治の木造駅舎は、柵が置かれ遂に封鎖されてしまいました。しばらくのお別れです。


 来年2017年の12月頃から、駅舎の暫定的な有効活用が図られる予定なので、その頃には再び中に入る事ができます。そして高架化事業が終わり、新駅舎が竣工するのが2028年の予定。12年の時はあまりに長く、私が人生の折り返し点をとうに過ぎた頃と思うと、待ち通しという気持ちより、途方も無い時のように思う気持ちが勝ります。

 取り壊される訳じゃないし、また朝に来るしと思いつつも、やはり離れがたく思います。しばらく作業の様子を眺めると、宿に向け歩き始めました。何度も振り返りながら…。

追記

 そして2018年4月より、高架工事期間中の旧駅舎の活用が始まりました。下記の記事へどうぞ!前年12月の旧駅舎の移動・曳家の様子も。
曳家後の浜寺公園駅旧駅舎、カフェにギャラリーに工事中でも活用中

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作者: Solano

Solano

列車に乗って気ままに鉄道旅。
或る駅でふと降りて、駅舎や構内をあれこれ観察。そしてぶらぶら街歩き。
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日本全国、たまに海外へ…

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