写真と心の中に刻まれた、ある日の旅のワンシーン…
鉄道と列車、駅舎巡り、エアラインと言った乗り物系の他、旅で訪れた街の風景、気になるモノ、宿泊したホテルなんかも綴った旅行記ブログ。日本全国、たまに海外へ…
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北海道のローカル線列車の車内から駅を見ていると、貨車の廃車体を改造・流用した簡易駅舎をよく目にします。そのような駅舎を、最近では「ダルマ駅」とも言うようです。
このような駅舎が多く登場したのは、国鉄末期頃と記憶しています。
無人駅となり老朽化した木造駅舎を建て替える必要に迫られていましたが、赤字経営が続く中、経費を掛けたくない…。一方、鉄道貨物取り扱いの減少で、余剰の貨車が多く出ていました。それらの貨車は造りは丈夫で廃車する程でもなく、このまま廃棄するには惜しい…。
それらの点が不思議と融合し、無人駅で乗降客が少なく、小さな待合室があれば事足りる駅は、余剰の貨車を改造し、待合室として使いまわしてしまえという流れになったのでしょう。
先日乗車した留萌本線は、何故かそんな貨車改造の簡易駅舎を多く目にしました。
舎熊駅。駅の向こうには日本海が広がっています。
礼受駅。高台にあって、日本海から吹き付ける風が厳しいのか、周囲をゴザのような幕で覆われているのが目を引きます。
大和田駅。小高い山に囲まれた雪原の中に、ポツンと佇んでいました。
貨車…、正確に言うなれば、かつては貨物列車の最後尾に連結され車掌が乗務した車掌車で、ヨ3500という形式。留萌本線ではヨ3500廃車体の簡易駅舎が多く見られます。1985年3月14日のダイヤ改正で、貨物列車の車掌車連結は原則的にされなくなったので、多くの廃車が発生したようで、貨車駅舎登場の時期と重なります
。
夕方、幌糠駅で降りました。この駅は下車した事はないものの、1997年の夏、北海道を自転車で旅した時、小さな峠を越えた後、国道沿いの駐車場で一休みした時に眺めた思い出深い駅です。
あの時から変らず、駅舎は車掌車改造の簡易駅舎でした。季節は真逆ですが、初めて下車する事ができました。私が10年前にいたのはあの辺か…。そう思い懐かしく周囲を眺めましたが、雪で埋もれる風景ばかり。
待合室内部に入ってみました。この車両の形式はヨ3500形という車掌車だそうです。狭苦しくベンチが置かれただけの殺風景さを感じる室内です。多少のリフォームをされているのでしょうが、窓のそのままの配置や、床面が錆びた鉄板なのは車掌車時代の名残りを感じます。革のモケット張りの木製ベンチがありますが、秩父別駅にも同じようなものがありました。昔の駅の待合室のベンチなのでしょうか…。
殺風景な室内の片隅の棚に、何故かUFOキャッチャーのぬいぐるみが。ちょっと和ませてくれました。
車内から見てきた留萌本線の貨車駅舎は、どこもメンテナンスをこまめにしていないようで、ペンキがひび割れ外壁が錆びつき、どこか痛々しいものがありました。
あと、画像は無いのですが、同じ留萌本線の恵比島駅も、趣き深い木造駅舎と思わせておいて、駅としては、実は隣の小さな木の小屋のような建物の方が正式なものです。木造駅舎の方は、NHKの朝の連続テレビ小説「すずらん」のロケで、昔の駅の雰囲気を再現するためにわざわざ造られたセットです。ドラマでは「明日萌駅(あしもいえき)」として登場しました。木造の小屋に見えるものの中には、実は貨車駅舎があり、雰囲気を壊さないように、木の板で覆われ、木造倉庫風に仕立てられています。
鉄道廃車体の利用という、レールファン心理をくすぐるものではありますが、貧乏くささ丸出しで、駅としての風格無く、クローンのように増殖していく貨車駅舎を私は好きになれませんでした。しかし、小さな集落や、自然の中にポツンと佇む貨車駅舎は、いつしかローカル線の一風景として私の記憶に刻み込まれ、いつしか、これはこれでローカル線を象徴する味のある風景だなあと思うようになっていました。
[2007年2月訪問]
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