写真と心の中に刻まれた、ある日の旅のワンシーン…
鉄道と列車、駅舎巡り、エアラインと言った乗り物系の他、旅で訪れた街の風景、気になるモノ、宿泊したホテルなんかも綴った旅行記ブログ。日本全国、たまに海外へ…
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夜が明け切らぬ早朝に上川駅を発ち、寒空の下、上白滝駅、白滝駅、旧白滝駅と巡り、遂に最後のとなる4駅目。ダイヤの隙間を縫うように、2本の駅間徒歩を完遂し、ゴールは目の前に…。
ほっとしながら下白滝駅を眺めました。駅は国道から真っすぐに100m位入った場所にあります。前回の3年ほど前、下白滝駅や上白滝駅などを訪れた時は、丸瀬布駅前のタクシーでここに来たものです。
駅を眺めていると、私の気配を感じ、駅前の畜産家の敷地から一匹の犬がゆっくり歩き出て来て、私と下白滝駅の間で、ピタリと止まりお座りをしました。
前回はタクシーから降りると、狙ったように5、6匹の番犬たちが寄って来ました。中小型犬とは言え、緊張で体が固まったものです。しかし、吼えたり飛び掛って来る事もせず、逃れるように待合室の中に入り扉を閉めると、しばらくうろついた後、元の場所に戻っていきました。とてもよく躾けられていて驚いたものです。
進まずに犬の様子を覗っていると、敷地の中に戻っていきました。やはりよく躾けられています。きっと下白滝駅の廃止が報道されてからは連日、訪問者が来ているので、番犬たちにとってはとっくに慣れっこで「またか…、一応行っとくか。」という位の心境なのでしょう。
道を進むと左手には畜産家の敷地が広がり、夥しい数の犬小屋が並んだような小さな牛舎が並んでいます。敷地を見ると、先程の犬の他にも、もう一匹、犬がいました。だけど、両方ともその場から一切動こうとしません。きっともう一匹に、こいつは無害だと伝えてくれたのでしょう(笑)
後ろを見ると、旧白滝駅で一緒になった人が目に入りました。私より少し後に、歩き始め追いついたようです。
そして下白滝駅の前に再び立ちました。前回はあまり時間が無く、じっくり見られたという感覚が無く、何かもの足りない感覚を残していたのですが、今回は十分な時間があります。
1929年(昭和4年)、石北本線の丸瀬布‐白滝間の開業時以来の木造駅舎は古めかしく味わい深さが漂います。しかし、出入口付近が違う板で改修され、継ぎはぎ感というか、その部分だけ違和感を感じます。
待合室を抜けると、山に囲まれた中に、ただ雪原が眼前に広がっていました。
ホームに出ると白銀の世界…。周囲の建物は畜産家の倉庫や家屋、駅のすぐ前に経つ1軒の廃虚だけ…。少し離れた所を旭川紋別自動車道の築堤が通っていますが、交通量は非常に少ないようで、言われなければ気付かない位。駅は降り積もった雪と沈黙に包まれていました。
前回はこの風景の中…、駅舎の横辺りで、枯れた池のある廃れた庭園跡を発見し驚いたものです。
待合室の中に戻りました。駅舎正面こそ改修の跡が目立ちますが、こちらは窓口跡が塞がれた以外は素晴らしいまでに原形を保っています。出札口、手小荷物窓口のカウンター、造り付け木造ベンチ、そして見上げると、木の板が何枚も敷き詰められた天井…。開業時の下白滝駅に戻ってきたような気分に浸りました。
出札窓口は二つあり、それぞれに独立した木のカウンターがそのまま残っています。窓の部分が塞がれてしまったのが本当に惜しい!
カウンターの上には駅ノートと、小さな造花が置かれていました。造花にはささやかに「Thank you」というメッセージが添えられていました。地元の人が置いたのでしょうか…?
構内踏切の警笛が鳴ったので外に出てみると、網走行きの特急オホーツク3号でした。2号、1号、4号そそしてこの3号と、4本目の特急オホーツクでした。
上白滝駅から下白滝駅に来るまでは、概ね晴れていたのですが、ここにきて曇りがちの天気に。そうなると、あまり感じなかった寒さを急に感じるようになります。待合室で寒さをしのごうとしますが、暖房が無い室内は外よりマシな程度で、寒さに震え上がりました。
それでも、待合室にいつまでも閉じこもっているのも何だしと思い外に出ました。
駅のすぐ目の前には一軒の家屋が建っています。しかし既に住人は居なく廃虚となっています。駅にあまりに近いため、この建物はもしかしたら、昔は駅員官舎だったのかもとなのかもと推測しています。
国道から駅へ伸びる1本の道沿いには、西側にこの廃屋、東側の広大な敷地に畜産家があるだけです。それ以外、駅から見える範囲に建物はゼロ。小高い山に囲まれた一帯に、人の気配は畜産家の家だけ。昔はもう少し、人が住んでいたのでしょうが…。白滝シリーズの中で、いちばん秘境駅度が高いように感じました。
ちょうど子牛たちの昼ごはんの時間で、係の人がカートを押して、一つ一つ小屋を回って餌をあげていました。
あ、なんか見られている!
駅前に出たもののやっぱり寒く、待合室に戻りました。あまりに寒く、手を摩りながら「寒い~寒い~」と寒さに震え上がるしかありません。上り列車の白滝行きの到着まであと20分…。時計の針を見ながら、その時間がとてつもなく長い時間のように思えました。
列車の時間が迫ると名残りにと、またあれこれ撮影しようと、そして寒くても下白滝駅の空気を感じようと、外に出ました。
上りホーム側に立ち駅舎を眺めます。こうしてみると、意外と小さな駅舎です。
駅内の掲示によると、下白滝駅に停車する3本の上り列車のホームが、この2番線から1番線に変更になると書いてありました。期間はH28年3月31日までと…。つまりは、もうこの2番線に列車が止まり、乗客が乗り降りする事が無い事を思い、少し寂しい気持ちになりました。
そして、遂に待ちに待った上り白滝行き普通列車・4624Dが近づいてきました。警報が鳴り響く中、別れの一枚はどこでシャッターを切るかあれこれ思い巡らし、やはり木造駅舎を絡めるのが自分らしいと思い一枚。そして、駅舎から外れた部分に停車した単行のキハ40を撮影すると、乗り遅れまいと車内に駆け込みました。
~完~
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