写真と心の中に刻まれた、ある日の旅のワンシーン…
鉄道と列車、駅舎巡り、エアラインと言った乗り物系の他、旅で訪れた街の風景、気になるモノ、宿泊したホテルなんかも綴った旅行記ブログ。日本全国、たまに海外へ…
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真冬の北海道、宗谷本線の列車に揺られ旅していました。車窓は一面の雪で、なおも雪が降り景色は白く霞んでいました。
列車は雄信内駅で停車し、私は厳寒の空の下、プラットホームに足を降ろしました。
JR北海道の駅としては珍しく、昔のままの雰囲気を良く留めた古い木造駅舎が残りますが、あちこち傷みが目立ち、廃虚の趣きさえ漂います。
無人駅ですが、冬期は線路の除雪要員が旧駅事務室に詰めています。なので、あちら側はストーブが焚かれ暖かそうですが、こちら側の待合室は寒いまま…。待合室の天井下に、ストーブの配管が通っているのを恨めしい気分で見上げます。
ストーブの配管は壁を抜けて外の煙突へと続いています。煙突の外の付け根部分は、暖かい煙が急に冷たい空気に触れる部分のためでしょうか…、煙突からひとつひとつ垂れる雫はマイナスを記録する寒さのため凍りつき、とんでもない大きさのつららと化し積もった雪に突き刺さっていました。目の前の何気ない場所のすさまじい風景に、自然の猛威を感じます。きっと夜はマイナス10度以下という極寒は、道北ではあたりまえなのでしょう。
灰が混じり黒味を帯びている巨大なつららは不気味さを漂わせています。
駅前に歩みを進めると、小さな集落が形成されています。いえ、「されていた」と言ったほうが正確なのでしょう。十件程度ある建物は廃虚ばかりで、雪に埋もれながらただ無言で佇むだけ。雄信内駅の駅前は、住民が離れた無人地帯と化していたのでした。秘境駅… 過疎… 棄てられた街…。しかし、心ならずも想いある故郷を離れざるを得なかった人々の心情を想うと、心が痛くなってきます。
廃車、廃屋、廃商店、廃校…、廃墟の数々が確かに人がそこに住んでいた事を伝えてくれます。それらを見るにつけ、深い雪の下から、人々の生活の残り香が未だに漂ってくるかのよう…。ただぼう然としながら集落の中を歩きました。
[2006年2月訪問] (北海道幌延町)
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